どういうプレイヤーが勝つボードゲームが好きか

 ボードゲームをカテゴリーに分けるときには、システムで分けたり、テーマで分けたりします。同様に、そのゲームを得意なのはどういう人間かでボードゲームを分類することもできるでしょう。例えば神経衰弱なら記憶力の良い人が強いゲーム、という具合です。
 思いつくものをいくつか上げると、記憶力の他に、計算力がある人が強いゲーム、指先の器用な人が強いゲーム、咄嗟の判断ができる人が強いゲーム、相手の考えを読むのが得意な人が強いゲーム、数多いリソースを管理できる人が強いゲーム、交渉が得意な人が強いゲーム、などでしょうか。まだ他にもあるでしょう。
 交渉の例について書くと、これは特に三人以上でプレイするゲームにおいて、他のプレイヤーとの「自分は○○をするのでそちらは○○をして下さい」などの会話によって、自分に有利に事態を運べるようなゲームを指します。これについて、交渉でゲームが大きく動きすぎることに文句が出ることがあります。プレイヤーの交渉力で勝敗が決まるのなら、ルールは関係ないじゃないか、というわけです。しかしこれはもちろん的を得ていません。それは交渉力を問うゲームなのです。例えば指先の器用さが問われるゲームにおいて、指先の器用さで勝敗が決まるのならルールは関係ないじゃないか、と言っても的を得ていないのと同じです。
 ゲームの好き嫌いにはもちろん個人の好みがあります。交渉ゲームが好きな人もいれば、リソース管理ゲームが好きな人もいます。この文章のポイントは、どういうゲームが好きか、は、どういう人が勝つボードゲームが好きか、ということであるという点です。交渉ゲームが好きというのは、交渉が得意な人が勝つゲームが好きということです。計算が必要なゲームが好きというのは、計算力がある人が勝つゲームが好きということです。運の要素が強いゲームが好きというのは、運のいい人が勝つゲームが好きということです。
 自分の好きなタイプのゲームを思い出して、それはどういう人が勝つゲームかを考えてみるのは面白いでしょう。それは、ゲームではどういう人に勝って欲しいか、ということでもあります。暗記力が強い人が暗記力が弱い人に勝つゲームは面白いか面白くないか、それは、暗記力というものを人の能力のどこに位置づけるかによって変わってくるでしょう。例えば、身長の高い人の方が有利なボードゲームがもし仮にあったとしたら、それはあまりフェアなゲームとは言えないような気がします。暗記力があると有利、という条件は、それと同じと感じられるしょうか、違うと感じられるでしょうか。計算力については、語彙については、反射神経についてはどうでしょう。
 そして、あなたが好きなゲームは、自分が得意な、自分が勝てるゲームでしょうか? それとも?

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ボードゲーマーに100の質問(短縮版)

*回答が特になしとかごく普通とかの質問は削ってます。

Q1:ボードゲームにハマった(ボードゲーマーになった)のはいつごろですか?
 1992年頃だと思います。
Q2:ハマるきっかけになったゲームは何ですか?
 『タイタン』かなー。
Q3:どのようなタイプのゲームが好きですか?
 SFやファンタジーテーマのものが好きです。
Q4:よくゲームをする場所はどこですか?
 行きつけのゲーム会。
Q7:ゲームはいくつくらい持ってますか?
 エクスパンションは数えないとして50ちょっと。
Q8:どれくらいのプレイ時間のゲームを好みますか?
 一日で終わる範囲で、長いほどいいです。
Q9:オールタイム・マイベストゲームは何ですか?
 ハイパーロボット、Vampire:the Eternal Struggle、ウォーハンマー40000
Q10:これまで回数を一番多くプレイしたゲームは何ですか?
 Vampire:the Eternal Struggle
Q11:好きなゲームデザイナーは誰ですか?
 リチャード・ガーフィールド、Phil Ekland
Q13:好きなゲームメーカー・ブランドはありますか?
 ゲームズワークショップ。シェラマドレゲームズ。ルーニーラボ。ウィズキッズ。ファンタジーフライト。
Q17:子供の頃、どんなゲームを遊んでいましたか?
 パーティージョイ。人生ゲーム。デパートで売ってた軍人将棋っぽい盤ゲーム。モノポリー
Q18:麻雀は遊びますか?
 遊ばないなー。ルールは知ってますが点数計算はできません。でも『近代麻雀』は毎号読んでます。
Q19:『モノポリー』は好きですか?
 好きです。なんとなく伝統文化っぽい感じが。
Q20:『カタンの開拓者』は好きですか?
 数多いゲームのひとつというだけ。
Q21:『カルカソンヌ』は好きですか?
 数多いゲームのひとつというだけ。
Q22:『ドミニオン』は好きですか?
 なんというか、デッキ構築要素というのは、その場で構築するよりも、家でじっくり時間をかけて構築したものを持ち寄って遊ぶのがキモだと思うんですよ。
Q24:伝統ゲームやアブストラクトゲームは好きですか?
 アブストラクトゲームは好きです。伝統ゲームだと最近将棋に目覚めました。。
Q25:BSWiPhone/iPadアプリでボードゲームを遊びますか?
 機器を持ってさえいないです。
Q26:テレビゲーム機や携帯ゲーム機でボードゲーム以外のゲームを遊びますか?
 コンピューターゲームは基本やらないのです。
Q27:ウォーゲームは遊びますか?
 細かいヘックスのやつとか積み木のやつなら、遊んだことないんですけど、体験してみたいとは思ってます。トワイライトストラグルとかならたまにやります。
Q28:TRPGは遊びますか?
 シノビガミが面白いです。
Q29:トレーディングカードゲームは遊びますか?
 Vampire:the Eternal Struggleを。
Q31:得意なゲームはありますか?
 ハイパーロボット
Q33:食わず嫌いだったけど、遊んでみたら意外とイケたというゲームはありますか?
 ウォーハンマーがそうかな。始めたら大好きになりました。
Q34:忘れられないコンポーネントのゲームはありますか?
 verticonに勝るものはないです。買ってないですが。
Q35:今入手しづらいゲームで欲しいものはありますか?
 boardgamegeekのマーケットプレイスを利用するようになったので、だいたいのゲームは手にはいるようになりました。
Q36:所有ゲームの中でもっとも笑いの取れる一品は何ですか?
 宇宙戦艦ヤマトの同人カードゲームかな……? コズミックコースターなんかも出オチ的に受けるかな。
Q38:国産でオススメのゲームは何ですか?
 戦国合戦絵巻
Q39:「これこそ日本語版を出してほしい!」というゲームはありますか?
 ウォーハンマー40KのTRPG。コアルールもエクスパンションも一通り買うと思います。
Q41:よく見ているボードゲーム関連サイトはどこですか?(いくつでも)
 boardgamegeek。国内だとB級SFゲーム分科会さんにはだいぶお世話になりました。
Q42:購入の参考にしているゲーム紹介サイトはどこですか?(いくつでも)
 boardgamegeek。アドバンスドサーチがとても詳細なのと、写真が多くてコンポーネントがわかるのがすばらしいです。
Q43:書籍・雑誌で「これは役に立った」というものはありますか?
 だいぶ古い本ですが富士見ドラゴンブックスの『女の子だってRPGしたいんだもん!』が大変勉強になりました。
Q44:月平均するといくらくらいゲームを買っていますか?
 二〜三ヶ月にひとつくらい?
Q45:主にどこでゲームを買っていますか?
 個人輸入が多いかなと思います。アマゾンで買えるものはアマゾン。
Q46:ゲームを買うときに決め手となるものは何ですか?
 SFかファンタジーっぽいテーマ。直接攻撃があること。プレイ人数が3人以上。
Q52:海外から個人輸入したことがありますか?
 あり過ぎて自分のクレジット番号が暗唱できます(笑)。
Q54:買ったけど未プレイのゲームはどれくらいありますか?
 だいぶ沢山……
Q57:否定的な感想を言ったり書いたりするほうですか?
 いいえ
Q58:ゲーム中によく心がけていることや信条はありますか?
 負けそうでもモチベーションを高く保つ
Q59:ボードゲームにおけるジンクスはありますか?(『マニラ』で船長をやると贔屓した船が到着しないなど)
 ジンクスは非科学的です
Q60:あなたは勝敗にどれくらいこだわりますか?
 勝ちたいですし、「勝敗にはこだわらない」と明言する人とゲームをするのは苦手です。
Q63:同じゲームを繰り返しプレイするほうですか?
 Vampire:the Eternal Struggleは繰り返し遊んでいますが、これはデッキ構築要素のあるゲームだからかも。ボードゲームはそれほど繰り返してはいないと思います。
Q64:ほかのプレイヤーに「これはやめてほしい」と思うことはありますか?
 負けそうなときにモチベーションが折れること。あと、「自分/○○さんは引き/ダイス目が悪い」的な言葉が苦手です。「今日のダイス目は悪かったなー」ということならいくらでもあるでしょうが、「いつも悪い」というのは非科学的だと思うので。
Q65:長考はどれくらい許されると思いますか?
 「許す」という言葉の使い方は偉そうで好きじゃないかなー。
Q66:ゲームが終わる前にもうトップを取れないことが確定したらどうしますか?
 一点でも多く取るようにします。
Q68:インストで定石を教えることやゲーム中に助言をすることについてどう思いますか?
 この質問だと、定石を教えると面白くなくなることが想定されているようですが、定石というのは、それを知らないと面白くないというものじゃないでしょうか。ということで定石は教えるべきだと思います。ゲーム中の助言については人間関係によるかと。
Q69:インストで工夫していることはありますか?
 先に勝利条件を説明して、そこへ向かうものとして他のルールを説明します。
Q70:ゲーム中の飲食はどこまでOKだと思いますか?
 サンドイッチ伯爵は本当に頭の良い御方。
Q73:自分でゲームデザインをしたことはありますか?
 考えたことは(笑)
Q74:攻略法をいろいろ考えたくなるほうですか?
 それはもう。
Q77:便利だと思う小道具はありますか?
 プレイマット。ダイスブーツ。
Q78:ゲームの収納に困ったとき、何か対策をしていますか?
 大きいジップロックにすべて移して箱は捨てちゃいます。
Q80:ゲームサークルのメリットは何だと思いますか?
 そこへ行けば遊ぶ相手がいる。
Q81:ゲームサークルの問題点は何だと思いますか?
 変な人がいる
Q83:ゲームサークルで嫌な思いをしたことはありますか?
 ノーコメントでひとつ(笑)
Q84:自らゲームサークルを立てようと思ったことはありますか?
 言語依存の強い未翻訳ゲームを英語のままで遊ぶサークルを立てたいと思ったことがありますが気の迷いでした。
Q85:「すごいなあ」「えらいなあ」と思えるプレイヤーや関係者はいますか?
 昔所属していたゲームサークルの人がマジックの全国大会で優勝したりしまして。
Q86:ボードゲーマーには変な人が多いと思いますか?
 強くそう思います。
Q87:エッセン国際ゲーム祭など海外のボードゲームイベントに行きたいと思いますか?
 ジェンコンに一度行きました。
Q88:浅草のゲームマーケットに行ったことはありますか?
 ないです。ついでに言うと、気になるサークルが軒並み大阪のゲームマーケットをスルーしててだいぶ悲しい思いをしました。
Q92:ゲームをあまりやってない人に対してどんなゲームを出しますか?
 ワンスアポンナタイム(自作和訳シール付き)がしばしば受けます。
Q95:ボードゲームという趣味をやってきて嬉しかったことは何ですか?
 某ゲームの全国大会で優勝したこととか。
Q98:日本におけるボードゲームの現状をどう思いますか?
 卓上ゲームできる飲食店があるといいなと。東京にはあるのかもしれませんが。
Q99:もしボードゲームの発展を阻害しているものがあるとすれば、それは何だと思いますか?
 日本人が仕事中毒で親子で遊ぶことが少ないこと? 日本と欧米に、文化的な違いなんかはあまりないと考えているのですが、違いがあるとすれば休みの多さじゃないかと思うのです。日本の会社が基本的に残業も休日出勤もない週休二日だったら、ボードゲーム買ってみるお父さんお母さんはもうちょっと多いんじゃないかな。
Q100:最後に。あなたにとってボードゲームとは何ですか?
 ボードゲームを楽しく遊ぶことは面白い本を読むことと似ているような気がします。
 あと、英語をできるようになったことにボードゲームの影響がすごくあると思います。まだ日本語になる前のマジックのカードを辞書をひきながら読んだり、個人輸入のために注文メールを英語で書いたり、ゲームの世界を舞台にした小説を読みたくて洋書に手を出したり、ゲームの大会のために海外まで行ったりと、英語力が段階的に進歩する過程ごとにゲームの影響がありました。とくにゲーム関係で洋書を数多く読むことになったのが英語力の進歩になり、本業にも大きくプラスになりました。その点では、ボードゲームに出会ったからこそ今の人生があるとも言えます。
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ドラマチック展開ジェネレーターとしてのゲーム

    遊戯王で考えるドラマチック展開ジェネレーターと用意されたストーリー
    そして競技としてのゲーム

 遊戯王というカードゲームがあります。日本発のゲームでありながら海外にも輸出され、カードゲームとしては世界でも5本の指に入る売れ行きを示す、非常に人気のあるゲームです。
 しかしながらこの遊戯王卓上ゲームに戦略や思考やゲーム性を求める人たちからはどうも一段低く見られてしまう傾向があります。その大きな理由が、運の要素が大きすぎる、というものです。遊戯王はカードゲームなので、いろんなカードを混ぜて切り、山札をつくります。その山札からカードを引いて遊ぶわけですが、何を引くかが勝負に大きく関ってきます。いいタイミングでいいカードを引ければ勝ち、引けなければ負け、それでは単に運のよしあしを比べているだけじゃないか、と言われてしまうのです。
 ここで遊戯王の名誉のために述べておくと、遊戯王には頭を使う要素も非常に多く、運が良いだけでは勝てません。遊戯王をやりこんでいるプレイヤーに、ルールを知っているだけの初心者が挑んだような場合、幸運の力だけによって初心者が勝てる可能性はかなり低いと言ってよいでしょう。
 しかしながら、ここではあえて遊戯王には運の要素が強いという点に着目します。それもまた確かな事実だからです。とても不利な形勢で、山札から決定的なカードを引いてきて逆転勝利、という展開が遊戯王には確かにあります。そこを指して、そんな運で勝てるゲームはつまらないよ、と指摘されるのであれば、その指摘には一面の真理があるのかもしれません。
 しかしながら、その指摘には根本的な不備があります。遊戯王は現に人気があり、ものすごく売れているという事実です。つまらないなら売れるわけはなく、面白いから売れているのです。子供だけに人気なんだろう、というのは単に事実を見ていない反論で、子供にも売れていますが大人にも売れています。つまり遊戯王は面白いのです。そして、遊戯王は運で勝てるゲームで、その欠点にもかかわらず面白いというわけではないというのが重要です。遊戯王は運で勝てるゲームで、だからこそ面白いと考えねばならないです。
 とても不利な形勢から、一発逆転のカードを引いて勝利! 勝った方のプレイヤーにとって、これは楽しいと言っていいでしょう。では、負けた方のプレイヤーにとっては? そこが問題になります。勝ったら楽しいが、負けたら楽しくないようでは、そのゲームは面白いとはいえません。遊戯王が優れているのは、負けた方にとっても、例えそれが運で負けたのだとしても、なお面白く感じられるゲームになっているからです。なぜ、運で負けても楽しいのか。それは、その展開がドラマチックだからです。
 遊戯王は、ドラマチックに展開することに特化したゲームなのです。遊戯王のカードは、ドラマチックな効果を持たされています。ときにいささか強力すぎるような効果のカードが存在するのも、ドラマチックな展開を優先するためです。遊戯王が遊ばれるとき、ひとつのゲームはひとつのドラマチックなストーリーです。そしてプレイヤーは、ドラマチックなストーリーの当事者なのです。
 ここにこそ遊戯王の人気の秘密があります。遊戯王はプレイヤーにドラマチックなストーリーの当事者になることを可能にします。そして、ドラマチックなストーリーの当事者になることには、ものすごく需要があるのです。これは実は、コンピューターRPGにおいて、壮大なストーリー志向の作品が人気を博しているのと近しい傾向です。コンピューターRPGでは、プレイヤーはドラマチックなストーリーの当事者になることができ、ドラマチックなストーリーの当事者になることこそが、多くの消費者の求めているところであり、だからこそストーリー志向のコンピューターRPGが売れます。遊戯王においては、プレイヤーはより短いながらもはるかに手軽な形でドラマチックな展開の当事者になることができ、ドラマチックな展開の当事者になることに膨大な需要があることこそが、遊戯王の人気の理由となります。
 もちろんそこには大きな違いもあります。コンピューターRPGには用意されたドラマチックなストーリーがあります。遊戯王にはそれはありません。にもかかわらず、遊戯王のゲーム進行はドラマチックなものになります。そうなるように、それを目的として、遊戯王というゲームは見事にデザインされています。すなわち、遊戯王は、ドラマチック展開ジェネレーターなのです。
 ゲームとして、運の要素が強いということはプレイの上手さは二の次ということではないか、という指摘ができます。これはまったくその通りであり、実は遊戯王の楽しさにとっては、勝てばより楽しいのは間違いのない事実ながらも、勝ち負けは本質的な問題ではないのです。これもストーリー志向のコンピューターRPGと同じです。ストーリー志向のコンピューターRPGもまた、ゲームではありながら、最終的には勝ち負けを問うものではないといってよいでしょう。
 なるほど、遊戯王がよく売れる理由はわかったし、遊戯王の魅力もわかった、しかしそうと知ってしまえば、ますます自分個人にとって遊戯王を遊ぶ理由はない。自分はプレイの上手さを競うゲームがしたいのだ。という意見があるでしょう。それはまったく自然ですし、好感の持てる主義主張でもあります。そして、ここから先が、この文章が本当に述べたいテーマです。
 ここまで、遊戯王について詳しく見てみました。それは遊戯王が、ドラマチック展開ジェネレーターとして非常に優秀であり、すなわちその例としてふさわしかったからです。ここまで読まれた方は、ゲームをドラマチック展開ジェネレーターとして解釈するという考え方に、ある程度なじまれたと思います。さて、問いたいのはこういうことです。遊戯王以外にも、ドラマチック展開ジェネレーターと解釈できる卓上ゲームは多いのではないか。我々はプレイの上手さを競うゲームで遊んでいるつもりで、実は気づかぬままドラマチック展開ジェネレーターを楽しんでいるということがあるのではないか。
 近年日本でもよく遊ばれるようになった、ヨーロッパ産のボードゲーム、あれらの中に、実は結構な割合でドラマチック展開ジェネレーターが混じっているのではないかと僕は考えています。最近のボードゲームは、運の要素を含みつつも、運の要素が大きいとプレイヤーに感じさせないようにデザインされています。また、ゲームの進行が単調にならないように、ゲーム中にプレイの味わいが変動していくようにもデザインされています。しかしそのようなゲームデザインこそが、言ってしまえば用意されたドラマチック展開であり、プレイヤーがドラマチックなゲーム展開に乗れるように意図してそれらのボードゲームは作られているということができます。もちろん、それぞれのゲームには勝つための技術があり、上手くプレイしたプレイヤーが勝つはずですが、ある意味では、上手くプレイしたプレイヤーはストーリー志向のコンピューターRPGをより上手くクリアするプレイヤーのようなものであるということも言えます。序盤には土地を開発することを競いなさい、中盤には資源を集めることを競いなさい、終盤には建築物を建てることを競いなさい──ある種のボードゲームは、遊戯王以上にドラマチック展開ジェネレーターであるとさえ言えます。ある意味では、そこには事前に用意されたストーリーまでがあるのです。ここまで来ると、何がドラマチック展開ジェネレーターで何がそうでないのかはどうにも入り組んだ問題になってきます。
 勝敗に対してプレイヤーの意志決定以外の要素が大きいが、それでも楽しいようなゲームが、ドラマチック展開ジェネレーターと言ってよいゲームでしょう。古典的なババヌキなども、ドラマチック展開ジェネレーターと考えることができます。一方、プレイヤーの意思決定が勝敗を大きく左右するほど、それはプレイの上手さを問うゲームに近づいてきます。しかしながら、あるゲームが完全にドラマチック展開ジェネレーターであると言ったり、完全に勝ち負けを問うゲームであると言ったりすることはできず、最終的には割合の問題になるでしょう、囲碁、将棋、チェスといったゲームでさえ、ドラマチック展開ジェネレーターの要素を一定以上含んでいることについては、どなたにも同意いただけることでしょう。もっとも、囲碁、将棋、チェスのような競技性の高いゲームは、プレイヤーの腕前に差がある場合などに、とてもドラマチックとは呼べない展開、負けた方には楽しいとは言えない展開になることが珍しくありません。つまり競技性の高いゲームはドラマチック展開ジェネレーターとしては劣っているわけです。ババヌキが優れているのは、プレイヤーの腕前に格差ができず、それこそ幼児と大人であっても楽しく遊べるゲームであるという点です。すなわち、パーティーゲームにはドラマチック展開ジェネレーターがふさわしいです。
 本稿の目的は、卓上ゲームを遊ぶ人が、自分の求めているのはどういうゲームなのか、自分が遊んでいるのはどういうゲームなのかを整理できるようにすることにあります。自分はあるゲームがすごく好きなのだが、どこが好きなのかを自己分析したい、自分はあるゲームに違和感があるのだが、何が問題なのかがわからない、などの場合に、ドラマチック展開ジェネレーターとしてのゲームという考え方を当てはめることによって、今まで見えなかったものが見えるかもしれません。自分はゲームにおいて勝ち負けを楽しんでいると思っていたが、実は自分が楽しんでいたのはドラマチック展開だったとか、他の人はすごく面白いというゲームを自分はいまいちだと思っていたのだが、他の人はドラマチック展開を楽しんでいて自分だけがプレイの技術的な部分を重視していたとかが明らかになる場合もあるでしょう。
 この話をさらに敷衍すると、プレイヤーがドラマチック展開を楽しむことに特化するあまり勝敗を度外視してしまう可能性や、近年のテーブルトークRPGの展開はゲーム性を減らしてドラマチック展開ジェネレーターに近寄っていく方向性であると解釈できるのではないかなどと論じることもできそうですが、それでは話が広がりすぎるのでひとまずここで筆をおくこととしましょう。

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4、部隊の運用

 いま、自分の軍団が、強さの異なる5つのユニットからできているとしましょう。各部隊の戦力は、上から順に5の強さ、4の強さ、3の強さ、2の強さ、1の強さとします。
 そして、敵の軍団も、おおむねこちらと同じで、5、4、3、2、1の強さの戦力から構成されているとします。
 どのように、自軍を敵軍とぶつけるべきでしょうか。
 5と5、4と4、3と3……?
 それでは、勝負の行方はまったく時の運次第です(もちろんそれも楽しいですが)。
 理想的には、こちらの5と敵の4、こちらの4と敵の3、こちらの3と敵の2、こちらの2と敵の1、そしてこちらの1と敵の5をぶつけるべきです。これで、戦場全体を見渡せば、四対一でこちらが勝っています。これが、部隊の運用の基本的な目標です。
 この考え方は、敵味方の戦力が同じパターンではない場合にも使えます。
 例えば自分の兵力が5、4、2、2、2で、敵の兵力が43332であるとかいった場合でも、自軍のどの部隊と敵のどの部隊をぶつけるかを、戦場全体を見て自分の勝つ箇所を増やす方向性で考えることができます。ある敵部隊は放置して、別の敵部隊に二対一でぶつかる、といったことも考えるべきです。
 もっと言えば、例え敵味方の戦力が平等でなかったとしても、例えば自軍の戦力が5、4、3、2、1なのに敵軍の戦力が6、5、4、3、2だったとしても、こちらの5と敵の4、こちらの4と敵の3、こちらの3と敵の2、こちらの2と敵の6、そしてこちらの1と敵の5をぶつけるならば、戦場全体では三対二で勝つことができるのです。


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3-2-2、強い兵力のみで編成する

 強い兵力のみで編成します。もちろん頭数は少なくなります。
 ウィニーと逆の考え方で、この編成では、相手の弱い部隊を、そこにいるだけで何もできない存在にしてしまいます。やはり相手のポイントはその分無駄になり。こちらが有利になります。
 この編成は、殲滅戦ではとても強力です。ただし制限時間の問題によって、相手を減らせる数には限界があるでしょう。戦場支配に頭数が必要なゲームではかなり不利になります。また、格下の敵にラッキーパンチを喰らってその後どうしようもなくなるという可能性もあり、総合的に言って不安定です。