初心者に受けるゲームの一般法則

 どんなゲームが初心者向けかというのはよく聞かれる話題です。個々のゲームについてそれが初心者向けかを論じたり、あるいは初心者向けのゲームとはどういうものかという一般論を論じたり。
 でも、その議論の前にひとつ確かめておくべきことがあるはずです。初心者とはなんなのか、です。なぜなら、同じ初心者という言葉を使っていても、話している人の間でそれが指しているものが違うことがあると思うのです。
 どうやら、初心者というカテゴリーは大きく二つに分けられるようです。
タイプA:うおー、ボードゲームなんて趣味の世界があるとは知らなかったぜー。めちゃめちゃ楽しそうだぜー。でもどのゲームが面白いのかわからないぜー。というタイプ。
タイプB:え? ボードゲーム? 人生ゲームみたいなやつ? 違うの? いろいろあるの? えー、想像もつかないな。面白いの? というタイプ。
 つまり潜在的にはすでにボードゲーマーなんだけどキャリアが無いというタイプAと、いわゆる一般人であるタイプBというわけです。
 なぜ、こんな分類を考えたのかというと、この二つは同じ初心者といっても方向性が全く違うので、タイプAにふさわしい初心者向けゲームとタイプBにふさわしい初心者向けゲームはかなり異なったものになるだろうからです。そして、そこを混同して、A向けのゲームをBに、B向きのゲームをAに勧めてしまうと悲劇が待っていると思われるのです。
 例えば「ブラフ」をAに勧めてしまうと、もちろんブラフはすごく面白いゲームなんですが、それでも、どことなく、ふうん、というような反応がかえってきてしまう可能性があります(もちろん大受けする可能性だってありますが)。Aのタイプの人は、おそらくは、もっとゲームゲームした方向性を求めているはずなのです。定番の「カタン」とか「操り人形」とか。でも、どちらにせよAはそんなに大した問題ではないでしょう。モチベーションがあるので、ひとつのゲームがピンとこなくても、ごめんごめん、じゃあこれを試してよと誘えば、喜んで乗ってくれるはずだからです。
 だから、初心者向けのゲームは何かを考える時に問題とすべきなのはBです。こちらのタイプに関しては、言い切ってしまえばカタンも操り人形も受けないでしょう。なぜそういった定評のある優れたゲームが受けないのか。では彼らは何を喜ぶのか。どういうゲームを勧めるべきなのか。その法則を、僕は見切ったような気がするのです(大きく出た)。
 初心者向けのゲームとは、「一手ごとに会話と笑いが生じるゲーム」です。
 上の例えに出たブラフなどは、まさにこの意味で初心者向けです。「5が3つ!」「あるに決まってるやろ!(笑)」「5が11!」「絶対ないわ!(笑)」という感じで。
 「ブロックス」も当てはまります。「じゃあここ」「ええ〜。やめて〜。(笑)」という会話がすべての手番に生じます。
 「ガイスター(ファンタスミ)」も当てはまるでしょう。「じゃあこれを進めます」「マジで〜。これどっちやろ〜。ちょう待ってや〜。ええ〜?」とか。
 ちゃんとカジュアルにプレイすれば(笑)「イントリーゲ」もまさに初心者向け。「どこに就職しようかな〜」「こっち来て、こっち」「2000!」「4000!」「15000!」「1000以上はびた一文払ったるかあ!」「島流しじゃ!」ワイワイガヤガヤ。
 「6ニムト」とか、「ラストチャンス」とか、「クルーゼル」とか。
 まあどんなゲームでも会話や笑いと共にプレイされるものですが、ポイントは「一手ごと」だと思います。「UNO」や「大富豪」「ページ1」が常に非常に強固な地盤をもっているのも、この特徴によるものです。そしてこのように考えるなら、カタンも操り人形も決して初心者向けではないのです。逆から言うと、初心者向けではないゲームとは、一手ごとに、「むう、そう来たか」となるゲームです。「むう、そう来たか」は、ある程度やり込んだゲーマーに生じる喜びであって、まだボードゲームというものに慣れていない初心者はその喜びにも慣れていないということだからです。
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