ボードゲームのジレンマの多くはジレンマではないのではないか

 以前からボードゲームにおけるジレンマというものに馴染まなかったのですが、その理由が不意に言語化できたので書いておきます。

 ボードゲームのジレンマは、言わば、あちらを立てればこちらが立たずであって、この選択肢を選ぶとこれは上手くいくがあれは上手くいかない……といった悩みです。
 で、迷って選択肢を選んで、ゲームが進行して、よし正しかった、とか、あっちにしておけばよかった、とか、そういう結果がでます。

 でも

 ジレンマっていうのは解消することを目的とすべきものじゃないでしょうか。

 現実世界におけるジレンマというのはそうですし、ジレンマの楽しみというのは解消するところにあるのだと僕は思うのです。与えられた選択肢から選ばねばならず、後になって正しかったとか違っていたとかがわかるというのはジレンマというよりもギャンブルじゃないでしょうか。

 そして僕は個人的にギャンブルはあまり好きではないのです。
 ここではギャンブルという言葉を使うときに、ランダムにカードを引くことなどだけでなく、交渉がないゲームでの他のプレイヤーの意思決定もランダム要素に数えています。人間の意志は賭けの対象になるのか、という疑問があるかもしれませんが、バカラ賭博など、人間の意思決定が絡むギャンブルの例はいくらでも挙げられます。他のプレイヤーの行動を見て、あーあっちじゃなくってそっちだったかー、などと感じるのはギャンブルの感覚なのです。

 もちろん、ギャンブルの要素は(もちろんお金をかけるという意味じゃなくて)ゲームの大きな楽しみのひとつです。非電源ゲームを楽しむ人の多くは、ギャンブル(と言って悪ければ確率を楽しむこと)の楽しみもまた好きであると考えられます。
 だから僕がここで述べたいのは、一般的にジレンマの楽しみと考えられているものは実はギャンブルの楽しみではないのか、そこに錯覚があるのではないか、ということです。

 僕は繰り返しになりますがギャンブルはあまり好きでないので、本当のジレンマの楽しみとして、解消できるジレンマがあるゲームが遊びたいのです。

 解消できるジレンマを与えてくれるようなゲームはあるでしょうか。

 交渉の要素があるゲームにはジレンマが解消できる展開があるでしょう。非常にアナログな種類のゲームにもジレンマが解消できる展開があると思います。そういうゲームが僕は好きなのです。

 あと、別の方向性として、囲碁や将棋などの本当に複雑なゲームにはやはりジレンマが解消できる展開があるような気がしますし、シミュレーション性の高いゲームにも(現実に似るが故に)ジレンマが解消できる展開があると思います。

「そのゲームが提供するジレンマは解消できるものか」というのはゲームの質を考えるうえでの指標のひとつになるのじゃないでしょうか。

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